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いもうと(後編)

いもうと ( 後 編 )


何日か経って、母が面会に来てくれた。
病室には入ってこなかったが、
廊下には黒いスーツを着た男性の姿が見え、
看護師さんと何やら話をしているようだ。

背格好からして父ではないみたいだけど、
一体、誰なんだろう。

それに、僕を見る母のこの眼は何なんだ?
今までこんな眼をした母を見たことがない。

でも、この眼どこかで・・・

ゆっくりと物音を立てずに、母はベッドから離れていく。
そしてチラリとスーツの男の方に視線を送り、
病室に意識が向いていないことを確認すると、
ベッド周辺の医療機材のコンセントを抜きだした。


何だ?何が起きているんだ?


僕の目の前は真っ白な霧に包まれ、頭の中がボーッとしてきた。
そして遠くの方から、男の叫ぶ声が聞こえる。

『何やってんだ由梨!!』


・・・由梨?


『だって、お兄ちゃんはもう動かないんだよ!』
『こうしてあげる方が、お兄ちゃんの為なんだもん!!』



・・・お兄ちゃん?


薄れていく意識の中で、僕は思い出した。

そうだ、この眼は・・・

妹の・・・

妹の由梨の眼だ・・・・。




それからどのくらい眠っていたのだろう。
僕はまだ生きている。
いや、生かされていると言った方がいいだろう。

枕元で僕の手を握ったまま、由梨は全て話してくれた。

25年前。
乗用車と大型トラックの衝突事故があった。
事故の原因は大型トラックの過積載と脇見運転。

乗用車に乗っていたのが、両親と妹そして僕。
その事故で両親を亡くし、僕は意識不明の重体。
妹は奇跡的に無傷だったらしいが、心に一番の深手を負ったのは、
由梨だったに違いない。

そんな由梨も今では結婚し、17歳になる娘もいるそうだ。
そう、僕が目覚めたあの日。
妹だと思っていた女の子が、由梨の娘だったようだ。

25年という長い年月を経て、僕の意識は戻ったが、
動くことはもちろん、話すことすらできない。

孤独な病室と窓から見える空だけが、僕の生きている世界。

今思えば、妹の由梨だけが、
僕の心を救ってくれようとしたのも知れない。。

由梨・・・ありがとう。。

窓


~ END ~
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いもうと(中編)

いもうと ( 中 編 )


妹


その夜、僕は妹の夢を見た。

あれは由梨が高校へ入学してまもない頃の話。

妹の通う高校では、悪質なチェーンメールが出回った。
内容は至ってシンプル。
不幸の連鎖から逃げたければ、友達5人に転送しろというもの。

こんなものは、誰かが仕掛けたイタズラなのだろうが、
実際に送られた人は、疑いながらもいも転送してしまうもの。
そしてそのメールが、由梨のところにも転送された。

しかしながら、凄いのはここから。
由梨はこのメールを受信した人は、学校のPCに転送しろと言い出した。
担任教師と学校のHP担当教員に事情を話し、
職員室にあるPCで、そのメールの解析を始めたんだ。

それから数十分後、由梨は1通のメールを作成。
送り先はチェーンメールの第一送信者。
そう、このイタズラを仕掛けた人物へのものだった。

当然のことながら、そのメールへの返信はなかったが、
このあとチェーンメール騒ぎが起こることはなかったという。
一体由梨は、どんな警告文を送ったのだろう。

それからというもの、PC関連でトラブルがあると、
みんな妹のところへ持ってくるようになったらしいが、
由梨はその大半を断っていたようだ。

僕は友達伝いにその話を聞いた時、
由梨らしいと思い、変に納得してしまった。
なぜなら、兄の僕ですら、
頼みごとをしても、滅多に聞いてはもらえないのだから。

きっと、あの全てを見透かす様な眼で、

『興味ない。自分でやって。』

そう言って断っていたのだろう。
でも、本当は凄く優しくて、思いやりがある妹なんだ。

中途半端に助けるような事をしない、
本当に必要がある時だけしか助けない。
そういう性格だから、
由梨は冷たいって、思われてしまうのだろうな。


そんな懐かしい思い出の夢だった。

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いもうと(前編)

いもうと ( 前 編 )

ナース


とある街のとある病院。
見たこともない機械に囲まれた病室のベッドで僕は目覚めた。

ベッド脇にある小さな台の上には、
幸せそうな家族の写真が置いてあり、
そこには僕も写っている。

随分長い間眠っていたような気がするが、
僕はどのくらい眠っていたのだろう。

トントン。
『失礼しま~す。来栖さん、お加減はいかがですか?』

そう言いながら、看護師さんが入ってきて、
手に持っているボードに何かを書き込んでいた。

白衣の天使とは良く言ったもので、
真っ白なナース服に身を包んだ彼女は清潔感に溢れ、
開けられた窓からそよぐ風に乗って、
彼女の優しい香りが穂のかに感じられる。

入院患者と看護師が恋に落ちるなんて話をたまに聞くけど、
こんな素敵な女性に優しく看護されたら、
そりゃ誰だって、恋の一つや二つしても仕方ないでしょ。

そんなことを思い巡らせながら、僕は再び眠ってしまった。。


暫くし女性の話声で目が覚めると、
そこには母と妹が面会に来てくれていた。

母の名は由紀子。
いつも明るく笑顔を絶やさない優しい人。
妹の由梨は、至ってクール。
携帯やパソコンを手足のように操る、電脳女子高生。
人がすることに無関心だから、冷たい人だと誤解されやすい。

そんな妹の影響なのか、母は携帯で何やらやっている。
それとは逆に、妹は一日中弄り続けていた携帯を、
今日は持っていないようだった。

僕が声をかけようとした時、先に妹が母向かって、

『ねぇ、つまんな~い!もう帰ろうよ~!』

っと言い出した。
妹よ・・・それはあまりにも切ないぜ。。
しかし驚いたのは、母の言葉。

『そうだね。つまんないし、帰ろうか。』

それにはさすがに、絶句したよ。。
何も言葉を交わすことなく、帰ってしまうとは・・・

あぁ、ひとりぼっちになってしまった。。

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