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五人目 ④

そのあと1時間近く交流会は続き、消灯時間と共にお開きとなり、
侑斗、早川、今村の3人は、反省会と証し近くの居酒屋へ車で移動し、
思い出話に花を咲かせた。

早川と今村は、ほろ酔い気分で冗舌になってくると、
お酒の飲めない侑斗は、ウーロン茶を片手に聞き役にまわる。

『でもあの話、オチはイマイチだけど、内容的にはよくできてるよなぁ!』

っと言う今村に、侑斗は一呼吸措き話し始めた。

『今村さん、早川さんに聞いてなかったんですねぇ。
 あれ、オチのそこに!っての意外は全部実話なんですよ?
 自分と早川さんが体験した話を、まとめただけなんです。』


『ええぇ、マジかよ!!』

そこに2人の会話を聞いていた早川が、

『今村、この手の話苦手じゃん?言わないほうがいいかなと思って・・・』

っと言いながら、薄っすらと口元が笑っていた。

『それにしても、年々新入部員数減ってくよな。
 今年は5人だろ?そのうち団体戦に出れなくなるかもなぁ・・・』


そう言うと早川は、何処となく寂しげなため息を漏らしていた。

早川を家まで送った後、今村の家へ向かう車中、
侑斗はハンドルを握ったままのい姿勢で、今村に話しかける。

『今村さん。さっきの早川さんの言葉、気付きました?』

『ん?なにを?』

『新入部員の話です。今年は5人って・・・』

『ああ、それがどうしたの?』

酔いのせいか、今村は気だるそうだった。

『今村さん、今年の新入部員って4人なんですよ?
 あと1人、何が見えてたんでしょうね?』


『・・・・・・・・・・。』


この年の夏も、暑かった。。。。



~ おしまい ~
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ジャンル : 小説・文学

五人目 ③

『侑斗、オチがイマイチだったな。ははははっ』

今村がふざけた口調で、場を和ませようとすると、

『ちょっといいか?それ、夢じゃねぇよ?』

今村と同期生の早川が、神妙な顔で話し始めた。

『実は俺もここの1年の時、それ見たんだ。』

予想もしなかった早川の言葉に、部員達はザワつき顔を見合せた。

『俺のは声だけじゃなくて、本当に兵隊も見えた。
 そのサッカー部のやつらも、多分、本当に見てるよ。』


その場にいた全員が息を飲み、早川に注目した。

『その頃の剣道部の顧問って、今はもう定年退職してるジジイでな、
 そいつに聞いた話だと、この学校って第二次大戦の時は、
 学徒兵の訓練所になってたらしいんだ。
 実弾演習なんかもしてたって言ってたなぁ。』


そう言いながら、1年生の方へ体の向きを変え、話を続けた。

『ある日の実弾演習の時、敵国の兵隊がたまたまこの場所を見つけて、
 一気に攻め込んできたらしい。学徒兵は実弾演習中だろ?
 当然のように迎え撃って出て、血の惨劇になったんだって。
 戦争が終わって、校舎も建て直されたりしたんだけど、
 火葬設備なんてまともになかった時代だろ?だから校舎の下には・・・』


侑斗や他の部員は、背筋に寒気を感じ、ブルッと震えた。

『だからたまに出るらしいんだよ・・・・
 
 その時、死んだ人達が・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・そこに!!』


早川は突然声を大きく上げ、1年生の方を指差すと、

『うわぁーーーーーーーーーっ!!』

っと声を上げ、驚き慌てふためく1年生を見て、
卒業生や2,3年生は笑い転げた。

『悪い悪い。これ毎年恒例だから!』

早川は笑いながら、1年生を落ち着かせていた。

そう、これは早川の発案した肝試し。
校舎に泊まっていた頃は、4階隅の視聴覚室に行き、
そこに置いてある紙に名前を書くという肝試しが行われていたが、
合宿所ができてからは、夜になると校舎には鍵が掛けられ、中には入れない。

いたずら好きな早川は、このまま肝試しが行われなくならないよう、
侑斗に手伝わせ、形を変えて継続させたのだった。

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五人目 ②

『今は夏休み期間を、合宿希望の運動部で日程を割り振って、
 合宿所に60人前後ずつ泊まれるように、スケジュールを組んでます。
 野球部のように人数の多い部はその部だけで行い、
 少ない部は他の部と一緒にして、人数を調節するのです。

 以前のことは先輩方も知っての通り、
 校庭側にある、新校舎1階の教室に寝泊りしていました。

 それで、問題の一昨年の夏合宿の時のことなんですけど、
 隣の教室はサッカー部が泊まってまして、そのサッカー部の連中が、
 夜、教室に酒を持ち込んで酒盛りしてたんです。』


『あっ!それ知ってる!!
 サッカー部が無期限部活動停止になったあれだろ?』


今村が口を挟むと、卒業生の数人がウンウンと頷いた。

『はい。その事件です。
 飲んで酔っ払ったサッカー部が、夜中に校庭を走り回ってて、
 顧問に見つかって無期停部になりました。
 でもそれだと、剣道部は関係ない話だし、この合宿所に泊まっても、
 同じことが起きるかも知れませんよね?』


侑斗は意味ありげに、今村に問い掛けた。

『だよなぁ?つまり他に理由があるってことか・・・』

『はい。実はその前日の夜、自分、変な夢を見たんですよ。
 月明かりだけがぼんやりと瞼に映っている感じで、
 誰かの話す声を聞きました。』


その場にいる全員が、侑斗の語りに引き込まれていく。

『おい、やつらが攻めてきたぞ!
 動けるやつは、全員出て迎え撃て!!』


突然叫ぶ侑斗の声に、一同はビクッっとした。

『パニック状態で逃げ惑うような声が、いろんな方向から飛び交い、
 悲鳴や怒号、あとは銃声ですかね?そんなのが入り乱れて・・・。
 そのあとは、大きな爆発音がしたと同時くらいに目が覚めました。
 それで、その日の夜に教室でミーティングをしてるとき、
 夢のことを思い出して、みんなに話したんです。』


俯いたままの3年生が、数人コクリと頷いている。
 
『就寝時間になって、自分達は寝ようとしてたんですけど、
 隣の教室でサッカー部が馬鹿騒ぎしてたこともあって、
 自分は寝付けないでいました。
 そのうち、騒ぐ声がしなくなったと思っていたら、
 突然「ヤバイ逃げろ!」って、叫びながら窓から校庭へと、
 飛び出して行きました。』


『顧問が来たからじゃなくて?』

今村は疑問を投げかけたが、侑斗はそれを否定した。

『それはないですね。そのあと少しして、
 2階の窓から怒鳴っているのを見ましたから。』


手元にある紙コップの飲み物をゴクリと飲み、侑斗は話しを続ける。

『それで全員が教室に連れ戻されたあと、廊下に正座させられて、
 説教されたまして、その時の言い訳ってのがですね・・・』


勿体つけながら話す侑斗に、全員が注目している。

『軍服姿に銃を持った兵隊が、突然現れたらしいんです。
 動けるやつは、全員で迎え撃てって・・・。
 僕が前の日に見た夢と、そっくりだったんですよ。
 でも夢のことは、サッカー部は知らないはずですから、
 本当に驚きました。』


侑斗は一呼吸おき、更に話しを続けた。

『あともう一つ、驚いたことがありまして、
 その日も同じような夢を見たんですよ。
 そしたら他にも、その夢を見たやつがいたんです。なっ?』


侑斗が3年生の方を向くと、数人が見たと口々に言っていた。

 『・・・ってことで、不思議な体験をした話でした。』

っと言い、侑斗は話を締めくくった。

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五人目 ①

【 五人目 】

ある夏の出来事。
某県にある某高校では、夏休みになると、
交替で運動部の夏合宿が行われていた。

毎年8月1日から5日間は、剣道部の合宿日。
その中日に当たる3日は、剣道部の卒業生が後輩の指導にやってくる。
そして夜になると、新旧剣道部員の親睦を深める交流会があり、
数々の過去の逸話を語り繋いでいた。

『じゃあ夏だし、ちょっと不思議な体験をした話でもしますか。』

侑斗は語り始めた。

侑斗は2年前の卒業生で、この夏に集まった卒業生の中では、
唯一現役部員と一緒の期間に在学していた卒業生だった。

『俺が3年の夏合宿までは、教室に寝泊りしてたのね。
 今の3年は知ってるよな?』


そう言いながら侑斗が3年生の方を向くと、
3年生は全員俯いて黙り込んでしまった。

『何これ?侑斗、何かあったの?』

侑斗より2年先輩の今村は、興味深い表情を浮かべ声をかけた。

『はい。去年の合宿から、教室泊まりは禁止になったんですよ。』

『ん?それって、この合宿所を建てたからじゃないの?』

『ええ、確かにそれもあります。でも、それだけじゃないんです。
 じゃあ、ここだけの話ってことで・・・』


侑斗は説明口調で、事の顛末を話し始めた。

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